熱帯の太陽が降り注ぎ、人々が活気に満ちた市場を闊歩する。歴史的な建造物がモダニズム建築と肩を並べ、混沌とした美しさが漂う都市。そう、それがナイジェリア最大の都市、ラゴスです。そして、この魅力的な都市の建築的風景を鮮やかに描き出したのが、Kunlé Adeyemiによる「Quintessential Lagos」という一冊です。
Adeyemiは、ラゴスの生まれであり、グローバルに活躍する建築家。本書では、彼の独自の視点から、ラゴスが持つ多様な建築様式と都市構造を明らかにしています。単なる建築物紹介にとどまらず、都市の文化、社会、そして人々の生活と深く結びついた建築の存在を力説している点が魅力です。
ラゴスの建築:伝統と革新の融合
ラゴスは、かつては漁村として発展し、奴隷貿易の中継地としても機能した歴史を持ちます。その歴史的背景が、街並みに独特の風情を与えています。本書では、コロニアル時代の建造物から、近年の高層ビルまで、様々な建築様式が紹介されます。
建築様式 | 特徴 | 例 |
---|---|---|
コロニアル様式 | 西欧の影響を受けた重厚な建築様式 | ラゴス国立博物館 |
伝統的な Yoruba 様式 | 赤い土を材料とした家屋 | イケジャの伝統村 |
近代的な建築様式 | ガラスやコンクリートを多用した高層ビル | ネイジェリア・レコーズ本社ビル |
これらの建築物は、ラゴスという都市がどのように発展してきたのか、そして人々の生活はどのように変化してきたのかを物語っています。
「Quintessential Lagos」のユニークな視点
Adeyemiは、建築家としてだけでなく、ラゴスの出身者としての経験も活かして本書に臨んでいます。彼の視点は、単なる客観的な観察にとどまらず、都市の持つ複雑さと美しさを深く理解した上で描かれています。
例えば、本書では、スラム街と呼ばれる貧困地区の建築についても言及されています。これらの地域は、しばしばネガティブなイメージで語られがちですが、Adeyemiは、住民たちが創意工夫を凝らして住みやすい空間を作り出している様子を丁寧に描写しています。
また、本書には、多くの美しい写真が掲載されています。これらの写真は、Adeyemi自身が撮影したものであり、ラゴスの建築物だけでなく、人々の表情や街の風景も捉えています。写真を通して、読者はラゴスという都市の雰囲気を肌で感じることができるでしょう。
読み進めるにつれて浮かび上がるもの
「Quintessential Lagos」を読み進めていくと、ラゴスの建築は単なる建造物ではなく、都市の歴史、文化、そして人々の生活と深く結びついた存在であることを実感します。Adeyemiの情熱的な筆致は、読者にラゴスという都市の魅力を伝え、その建築に対する新たな理解を与えてくれるでしょう。
本書は、建築に興味のある方だけでなく、アフリカや都市開発に興味のある方にもおすすめの一冊です。